アフリカ大陸の先端・喜望峰。地域の中心ケープタウンからは、人種差別闘争の象徴、ネルソン・マンデラ元大統領(91)がかつて収監されていたロベン島も見える。岬に最も近い「世界の端」の共用グラウンドで練習するニューカースルフットボールクラブのメンバー、ルカンニョ・シュポーザ君(14)は、友人宅に集まって開幕戦を観戦。「世界のプレーヤーが一堂に集まる。それぞれの国のチームの特徴が見たい」と声を弾ませた。
メンバーの黒人少年たちは、いずれもアパルトヘイト政策撤廃(91年)後に生まれた。多くは、黒人居住区に住む。街の名はマシプメレレ。家々の多くはトタン造りの平屋で、洗濯物が雑然と並ぶ。
でこぼこだらけのグラウンドだが、黒人居住区のいくつかのチームが集う。住民が貧しい生活の中から金を出し合ってユニホームも買いそろえた。南アは、貧困で追い込まれて暴力や麻薬売買に走る子供が後を絶たない。世界一とも言われる高い犯罪発生率の原因の一つでもある。サッカーは、その防止にもつながると考えられている。
足りないユニホーム代は、居住区外の知人や企業が出した。その中には白人もいる。90年にマンデラ氏が解放されるまで30年近く、スポーツの国際舞台から締め出されていた南アフリカ。人々は今、人種の壁を越えて、少しずつ力を合わせている。
シュポーザ君は「サッカーは楽しいよ。うまいと人気者になれるもん」と満面の笑みを浮かべる。「好きな選手はスペインの(ストライカー)ビリャさ。日本っていう国のことだって知ってるよ」
「いつかバファナ・バファナでプレーするんだ」。メンバーは声をそろえた。11ある公用語の一つ、ズールー語で「少年たち」を意味する南ア代表の愛称だ。今の南アフリカの少年たちには世界の人々の前でプレーできる未来がある。
マシプメレレは、現地のコサ語で「乗り越えよう」という意味。さまざまな壁を乗り越え、南ア人が開く「世界の祭典」が始まった。【ケープタウンで安高晋】
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